未読、18。
文面は、もう出来ています。
——でも今夜は、すべて送らない。
返信案は、強さの違う三通りで
先に用意される。
そして、送らない方がいい夜には、
送るなと言う。
記憶はAIに。
時間は自分に。
Ⅰ
あなたの LINE には、
数年分の記憶が眠っている。
お客さまが何を好きで、
誰と誰が繋がっていて、
どのお客さまが、静かに離れかけているのか。
ナイショAI は、それを読む。
そして、あなたが動く前に、
答えを先に出す。
あなたは、探さない。
Ⅱ
未読、18。
文面は、もう出来ています。
——でも今夜は、すべて送らない。
返信案は、強さの違う三通りで
先に用意される。
そして、送らない方がいい夜には、
送るなと言う。
三週間、間が空いています。
まだ、間に合います。
関係の熱量は、時間とともに冷める。
ナイショAI はその温度を測り続け、
落ちきる前に知らせる。
甲殻類。
あの一皿は、下げてあります。
一度だけ聞いた「嫌い」を、
会話の中から拾い上げている。
皿が来る、前に。
奥様への手土産。
前回は、マドレーヌの箱。
贈ったもの、渡した店、その日の話題。
すべて会話から集められ、
次の一手として戻ってくる。
この一行は、あなたの言葉です。
一人称、語尾、句読点の癖、
絶対に使わない言葉。
ナイショAI が書くのは
AI の文章ではなく、あなたの文体だ。
あの人が、気持ちよく歌える一曲。
デュエットは、いつものあれ。
十八番も、断りたいアフターの
角の立たない断り方も、
場が始まる前に手の中にある。
Ⅲ
世の中の道具は、
人間に入力させることで動く。
ナイショAI は、その逆から作られている。
あなたを、入力係にしない。
Ⅳ
この仕事のデータは、
あなたのものだ。
誰に見せ、
何と繋ぐかを決めるのは、
あなただけ。
お客さまにも、お店にも、
あなたが許さない限り、
渡らない。
取扱いの詳細は プライバシーポリシー に定める。
Ⅴ
夜の街には、まだ、
何のインフラもない。
顧客の記憶も、店の在庫も、
酒の識別も、決済も、
手と、紙と、誰かの記憶で回っている。
私たちは、そこに
ひとつのデータ基盤を敷いている。
はじまりは、
ホステス個人の、武器から。